目が醒めると、僕は教室にいた。

教室には、誰もいなかった。
いつもなら、僕が眠りから醒めるとすぐに「大丈夫か、理樹」と僕を心配してくれる恭介も、ここにはいなかった。

「恭介、いないの?……恭介!」
恭介の名前を呼んでみたものの、僕の耳に聞こえるのは、僕の声だけ。
恭介は、いない。
恭介だけでなく、鈴も、真人も謙吾も、小毬さんも、いない。
「……!」
軽い吐き気を覚えた僕は、まるでなにかに押されるように教室を飛び出した。
そして、屋上へと続く階段を駆け上がった。
あそこなら、きっとあそこなら、小毬さんに逢える。
僕は、夢中で階段を駆け上がり、まるでなにかに引き寄せられるように屋上に飛び出した。

「……。」
僕を待っていたのは、小毬さんではなかった。
僕の眼前に広がる、世界。
僕がいるから、世界はある。
でも、その世界には、誰もいなかった
小毬さんだけでなく、恭介も、鈴も、真人も、謙吾も、クドも、西園さんも、葉留佳さんも、来ヶ谷さんも……僕の名前を呼んでくれる仲間は、誰もいなかった。
……。
僕の名前。
……。

あれ?僕は…いったい、誰だろう。
僕はたしかに僕として、ここにいるのに。
……。
僕はここにいる。
……。
ここにいるのは、本当に僕なのだろうか?
……。

この世界には、僕の名前を呼んでくれる仲間は、誰もいなかった。




fin.





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